1    現代日本のジュエリー市場

1989年の物品税廃止(それ自体は業界にとって大きな利益)で、確実な売り上げ統計が消滅してしまった。

→1989年以降の市場サイズの測定は、そのほとんどが素材輸入高などからの逆算による推計。

[ジュエリー市場  一応の推計]

1990〜91年    3兆円弱のサイズまで拡大

バブル経済の崩壊と共に2006年まで、一貫して縮小を続ける。

2006年          1兆2000億円強

[ジュエリー市場の構成]

98%近く        女性のための商品

1〜2%以下      メンズジュエリー

⭐️市場を考察する場合には、女性の生活だけを見れば十分で、男性市場は無視しても差し障りないのが実態。

[顧客層]

女性の平均寿命  84歳強の中で

☆若者市場

高校、大学を終えて就職し、自分の自由裁量所得を持つ女性達が、自分のセンスのみで選択し使うジュエリーを対象とする市場。

日本全体の富裕化が進み出した70年代から、急速に伸びた市場。

単価はそれほど高くなく、選択の基準がデザインとかその時の流行に敏感なの分だけ、素材価値に重きを置かない特徴がある。

ジュエリーは若い人ほど必需品化し、使い方も上手く、今後ますます拡大発展が期待される市場。

☆ブライダル市場

結婚に関わるジュエリー市場。婚約、結婚指輪などを中心として、現在では約1,900億円弱の市場規模と推測される。

1960年半ばに、デ・ビアス社がキャンペーンを始めて以来、ダイヤモンド指輪を婚約指輪に使わせる戦略が見事に成功し、今日のブライダル市場の基礎になっている。

しかし、このブライダル市場は一過性の市場で、結婚しない女性や、結婚しても無駄なお金は使いたくない女性も増え、やや漸減する傾向。

ダイヤモンドに独占されている市場を、誕生石などを手掛かりに、多様化していくことで新しい活路が開けるかもしれない。

☆新規富裕市場

中年以降の、自らの働きによって富裕化した人々が、その資産の一部を使って買うジュエリー。

富裕の意味は、昔流の富豪とか大金持ちとかの意味ではなく、普通の家庭で、子どもの教育も終わり、家のローンの目処もついて、衣食住にそれほど大きな比率の出費のない人々が、消費の一つとしてジュエリーを選ぶ市場。

女性市場は、常に自分より若い層の動向に影響される。若い女性にとってジュエリーが必需品化したことは、中年以降の女性にも及び、彼女たちにとってもジュエリーは必需品化。

この市場のジュエリーの単価は高く、ジュエリーを買う時は、素材の価格を重く見る傾向がある。

素材、デザイン、買う店の格などが大きな要素。

日本におけるジュエリー市場の中心。

若者市場、ブライダル市場が生まれ、全体の中でのシェアは下がったが、顧客層の主流。

☆本当の富裕市場(生涯を通して富裕な人々対象)

欧米でのジュエリー市場の本流と全く同じ。

これまでは日本には存在しないと思われて来たが、確実に増えてきている。

数の上では全人口の1%に満たないが、その購買力も商品に対する感覚の良さ、経験の豊富さなどで無視できない市場。

内容的にも価格的にも、一段上の消費レベル。

2   現代日本のジュエリー関連企業と業界

1兆2000億円規模の産業を実際に支えている業界の構成。

大別して、輸入・素材卸業者

                  製造業者・卸業者

                  小売業者

の3つに分けられている。

以下ジュエリー産業の流通構造の概略図。

3    これからの展望と予測

ますます選択的な支出が増加してゆく個人消費市場にあって、宝石あるいはジュエリー市場は、数少ない有望市場として脚光を浴びる。

ジュエリーそのものは、若い世代を中心に、女性の必需品としての地位を定着させてゆくもの。

ジュエリー需要を伸びると推測する理由

1   所得と貯蓄水準の高まり

     ジュエリーという商品は、単価が高く多品種少量生産品。実用性は皆無で選択的消費の典型。商品の理解に知識を必要とする特徴。

    こうしたジュエリーが売れるためには、一定水準の所得と貯蓄が必要。

    実際は、景気低迷の時期でも、所得も貯蓄も伸び続けている。

2   人口動態の変化

    ジュエリー最大の市場は、熟年層を中心とする富裕市場。50歳以上の女性全ての、女性全体の中での割合が増えてきている。

1985年    29.2%

1990年    32.3%

1995年    35.4%

2000年    38.9%

ジュエリー市場として、最も可能性の高い層が、構成比を上げていくのは大きなプラス。

3    女性の社会進出

女性の有職率    70%以上(パートタイマー含む)

2つの意味がある。

1    自分で自由になるお金が手に入る。

2    社会に出るからには、それなりの服装や、ジュエリーが必要になる。

働かないにしても、長生きすれば、それだけ社会に触れている時間が長くなり、良い服やジュエリーがそれだけ長い時間必要になる!

最後に、最も重要な価値観そのものの動態変化。

消費財はたいていのものは100%に近い所有率。家の中に物が満ち溢れている社会。

→物を買うのは、物がないからではなく、物を通じて、自分の趣味やファッション感覚や生き方を社会に示すという図式が出来上がる。

⭐️ジュエリーほど、それを買い、使う人のセンスが明瞭に現れるものはない。ジュエリーの必需品化は社会のトレンドを表す現象として定着してゆくものと思われる。

4   感想

    とても興味深く読ませて頂きました。ジュエリーが物の豊かさではなく、心の豊かさ求める現代において、より必要とされ求められるのは感覚的にもよく分かる気がしました。

    若者のジュエリー離れが話題になって寂しく感じておりましたが、今日の勉強で、少し安心しました。ファッションジュエリーを楽しんでいる若者も、ジュエリーがそこで必需品化すれば、ゆくゆくは素材などにも目を向けたジュエリーを選択する時期が来るようにも感じました。

   私のお気に入りのジュエリーが子どもや孫の世代に大切に受け継いでもらえる世の中になってもらえそうで、とても嬉しく感じました。