Ⅱ 素材編の最初は、宝石の基礎知識を勉強しました!

1    宝石とは

色、輝き、透明度、模様、形などが美しい石。

①長く使っていても壊れたり変色したりしない耐久性を持っていること  ②そうざらにある物ではないという希少性があること③身に付けて負担にならない携行性があることが要求される。

     ⬇️

これらの性質から、宝石が権威やステイタスあるいはグループの象徴になったり、護身符や祭祀用に使われたりするようになった。

1)宝石と結晶

宝石    大部分は自然に産出した鉱物。

・主な物は無機起源の鉱物

・有機起源(有機質)の宝石もある

      ・・サンゴ、コハクのように生命活動と関係

現在知られている独立した鉱物種は約5,000種類位あるが、コレクター用のレアストーンを含んでも、約70種類位しか宝石に使われていない。ポピュラーなものは20種類位。

2)結晶と非晶質、単結晶と多結晶

☆結晶

    鉱物のほとんどは結晶。鉱物を作っている原子が、規則正しく並んでいる固体のことをいう。

☆非結晶

    個体の中には、構成原子が規則正しく並んでいないもの。ガラスとか、宝石でいえばオパール、テクタイト、モルダバイト、コハクなど。固体であるけれど、中の骨組みは液体と似ている。

    例えばオパールは、原子よりも数千〜数万倍も大きい球状の非晶質のほぼ同じ大きさの粒子がびっしりつまって並んでいる。オパールの美しい虹色は、この粒子の並びと光との相関で生まれる。

非晶質のオパール。
左はオパールの原石
右はオパールのカボッション・カット

結晶は、さらに単結晶と多結晶に分けられる。

☆単結晶     

   水晶のように目で見える大きさまで成長した結晶。ブリリアントカットのように小さな切子面で囲まれたカット石を得るためには、単結晶の原石が必要。

☆多結晶

多結晶のメノウ
左はメノウの原石、
右はメノウで作ったストーン・カメオ

結晶のサイズが目で見えないほど小さくなってたくさん集まったもの。

水晶と同じ化学組成でも結晶のサイズが目で見えないほど小さいとメノウになる。メノウは、ファセットカットしても美しさが発揮出来なので、曲面で囲まれたカボッションカットにするか、縦模様を上手く生かしてストーン・カメオに細工されている。

3)鉱物名、宝石名(変種名)

鉱物名   

原子が規則正しく並んでいるので、鉱物は一定の化学式で表せる。

宝石名(変種名)

同じ表される鉱物でも、中の原子の並び方(結晶構造)が違うものもあり、見かけが違うので別の名前を使った方が便利。

例1)鉱物名  コランダム(ルビーとサファイアも同じ)

宝石名  赤色をルビー、赤以外をサファイア。

例2)鉱物名    ベリル(緑柱石)

宝石名    色調の違いにより、エメラルド、アクワマリン、モルガナイト、ヘリオドール、ゴッシュナイト、イエロー・ベリル、レッド・ベリルなど

2    結晶構造と性質

1)結晶の骨組み:周期性と異方性

結晶とは、原子の並び方が同じ周期で繰り返しており(周期性をもっている)、その周期は方向によって違う(異方性がある)

cf1   非晶質では、硬さに異方性はない(等方的)

cf2   結晶質でも、メノウのように多結晶の集合体では、異方性は相殺されて等方的にふるまう。

2)硬さと劈開(へきかい)

☆硬さ   

原子間の結びつきがどの程度強いかによって決まる。モース硬度が有名。

☆劈開(へきかい)

一定の方向に割れやすい性質。

結晶構造による。

ダイヤモンドは八面体の方向に劈開する性質をもち、雲母は、板に平行に劈開する性質をもつ。鉱物には、その種類によって、劈開をもっているものともたないものがある。それぞれ、結晶構造に由来して決まっている性質。

3)光の屈折:単屈折と複屈折

光の屈折

結晶の中に光が入ると、結晶の中の原子の並びによって、光の進行方向が変わること。

屈折率

光線の曲がる程度のこと。 

それぞれの鉱物で特有の屈折率をもつ。

ダイヤモンドは無色透明でも屈折率が大きいので、強い光沢をもつ。

単屈折と複屈折

単屈折

中に入った光は、1つの屈折率でしか屈折しない。

例)非晶質やダイヤモンド、スピネル、ガーネットのような等軸晶系に属する結晶。

複屈折

等軸晶系以外の結晶系に属する結晶。

屈折率が2つ、3つの物がある。

4)色の原因

結晶(宝石)に可視光線が入ると、吸収が起こらなければ、その石は無色透明に見える。一部の波長が何らかの原因で吸収されると、残りの波長に相当した色を示す。

例えば、コランダムは、純粋な時は無色だが、

微量にCrを含むと赤いルビー、FeとTiを含むと青いサファイアになる。

3  天然石とその処理、模造石、合成石及び人造石

・天然宝石     

色艶もよく傷も少なく、カットするだけで宝石として使える物

・天然石の処理

人為的な手段を加えると宝石のもつ美しさが復活するもの。

熱を加える、放射線を当てる、オイルや高分子化合物を含浸させる、染料を使って染めるなど。

証拠が実証されるものは、その旨鑑別書に記載されている。

・模造石

安価な材料で見かけだけを高価な宝石に見せようとしたもの。

・合成石

天然の宝石と同じ内容の結晶を人間の手で合成したもの。

・人造石

天然では知られていない素材で作った代用品。

模造石、合成石、人造石は見かけが天然石と類似しているので類似石という。物質的性質は違うので、鑑別は難しくない。

 4    鑑別書とグレーディング・レポート

鑑別書

ジュエリーに使われている宝石には様々なものがあり、見ただけでは判断できないこともある。屈折率、光学的性質、比重などを測定して、科学的根拠をもとに、この種だと判断を下したもの。

グレーディング・レポート

品質のグレードを根拠と共に示したもの。

現在ダイヤモンドにしか発行されていない。

感想

ダイヤモンドはモース硬度10で硬いけれど、劈開をもっているので、ある方向に割れやすく注意が必要だと聞いてはいたのですが、意味がよくわかっていなかったです。今回の勉強で、スッキリしました。それから、最近話題になっている合成石については、このテキストの発行された1997年には、合成石と天然石の鑑別は難しくないと書かれています。現在のところはどうなのか気になるところであります。今の段階でこのテキストの改訂をされていないところを見ると、業界的には特に不安はないと考えていらっしゃるということなのでしょうか。消費者としては、信頼できるお店(相手)から購入することを第一に考えております。