日本におけるアコヤ養殖真珠の工程

1)母貝(真珠を作る貝)の確保と育成

大量のアコヤ貝の安定確保が産業としての真珠養殖の鍵を握っている!

かつては海女が潜って自然に生息している貝を採取していた時代もあったが、現在は以下の二つの方法で大量の貝を確保している。

「天然採苗」(てんねんさいびょう)

アコヤ貝の受精は海中で行われる。受精卵は稚貝となって約20日間海の中で浮遊生活を送る。それから本来の付着生活に入る。ちょうどその頃を狙って、海中に杉の葉などの被付着物を投げ入れ稚貝を付着させ大量の採取し育成する。

「人工採苗」

貝の雄と雌を水槽の中に入れその中で受精させるというやり方。非常に効率的なようだが、厳密な海水のろ過が要求されるし、餌であるプランクトンの大量確保など技術的には一定の困難さを伴う。付着期以降の育成は海で行われる。

2)仕立て

なぜ行うの?

3)の挿核手術は貝にとつても大変な刺激と苦痛を伴う。そのための死亡や脱核あるいは低品質真珠の出現など多くの弊害が見られる。それを防ぐために行われるのが仕立てである。

具体的にどんなことするの?

アコヤ貝の活動は水の流れの速さに比例するので水の流通しにくい特殊なかごにアコヤ貝を長期間入れて、貝の活力を抑制し、生殖巣の発達も抑える。

(アコヤ貝は雄雌共に生殖巣をもっていてそれが発達して中の卵や精子がいっぱいになると、真珠養殖に悪い影響がでてしまうため。)

仕立てをすることで!

これらの仕立てを行われた貝は、その活力が抑制されているため、挿核手術のショックにも過剰の反応を示さず、様々な面でよい結果を生む。様工程の中でも最重要工程のひとつ。

3)挿核手術

日本人の手の器用さから生まれたと言われるほどデリケートな技術。

①開口器と呼ばれる専用の器具で貝殻を少し開け、貝台に乗せる。

②へらで内臓部分が見えるようにし、表面をメスで少し切る。

③切り口から生殖巣の中までメスで導入路を作る。次いで核とピースをそのみちに沿って送る。ピースは核に密着するように入れる。

挿核手術の上手下手は、はっきりと浜揚げ時の品質の差となって現れると言われる。そのくらい微妙な技術で重要なの技術。

4)養生および海事作業

養生

手術後の体力回復を目的に、特殊なかごに入れて陸地付近の筏にしばらく吊っておくことを養生という。この期間中に手術に耐え切れなかった貝は死亡したり脱核したりする。

30日前後の養生期間が終わり、沖合いの漁場に移動することを沖出しという。

海事作業

挿核手術された貝(手術貝、くろ貝、作業貝、珠貝とも呼ばれる)の養殖期間は、核のサイズや漁場によって違うが、一般的に半年から2年くらい。この間色々海の上での仕事があり、それを海事作業という。

【主な海事作業】

貝そうじ・・・貝殻の表面についたフジツボやカイメンなどの付着生物を取り除くこと。

塩水処理・・・貝殻に孔をあける付着動物を濃い食塩水の浸透圧を利用して駆除すること。

5)浜揚げ

真珠を採取すること。

日本においては12月から1月にかけて行われる。これは、寒い時期になると真珠に「てり」が出てくるため。